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AAレビュー 「東京!一人暮らしだモナ 【A-102 ギコ】」

前回のレビューに引き続き、今回も「東京!一人暮らしだモナ」から、
スレ主である、一人暮らしの1。 ◆ciTOKYo2Dkさん(以下、1。さん)の
三人の主人公のうちの一人であるギコの話をレビューしたいと思います。

続き



保管庫:東京!一人暮らしだモナ 【A-102 ギコ】 (東京!一人暮らしだモナ・素材集

大阪で暮らす高校生のギコ。
ある日彼は街角で自作の曲を弾き語りしている時に、東京のプロダクションの人間にスカウトされます。
ずっと歌手になるのが夢だったギコはこの話に飛びつき、親や教師、そして恋人だったしぃの
心配や反対を振り切り、高校を中退してこのチャンスにかけるために単身上京したのでした。

しかし現実はそんなに甘くは無く、結局ギコは挫折してしまいます。
反対を押し切って家を飛び出してきた手前と、歌手になるという夢に対する未練から大阪には戻れず、
牛丼屋でアルバイトをしながらなんとか生活はしているものの、将来の夢も展望も何も無い
ただ淡々とその日暮らしをする日々を一人、ギコは東京で送ることとなります。



ここまでのあらすじで、ギコに共感した人、ギコはバカだなあと思う人、たぶん両方いることでしょう。
世間一般の親世代の常識としては、芸能界だなんて成功するかどうかわからない世界へ行くなんてとんでもない、
ましてや高校を中退だなんて、堅実な人生を歩むことこそが幸せなのに…というところでしょう。
しかし中高校生からすれば、サラリーマンだけを目指す人生が本当に幸せなのか?
それに、成功するかどうかわからないということは、成功する可能性もあるわけで、
何事もやってみなければわからない、という感じではないでしょうか。

これはどちらの言い分ももっともであり、永遠のジェネレーションギャップかもしれません。

ただ、これだけは言えます。
堅実な人生、夢にチャレンジする人生、どちらの人生を選んだとしても、決して後悔はしないこと。
そして、その道を選んだのは自分であり、それを親や周りのせいには決してしないことです。
更に綺麗事を言えば、己の選択を信じ、その道を目指して努力することが必要です。

話をギコのことに戻しますが、己の才能や処遇に疑問を持ったギコは、自分の選択を
プロダクションの人間のせいにし、更に努力も放棄するという最悪の行動を取ってしまいます。
彼はプロダクションを逃げるようにして辞め、そして現在のその日暮らし生活となります。

この辺の話のくだりを読み返してみると、読み手としては「え?もっとがんばってみようよ!」
「せっかくプロダクションのスクールでレッスン受けるっていう大チャンスもらったんだよ?」
「ギコの歌手になりたいっていう思いはそんなものだったの?」という疑問がポロポロと湧きますが、
しかし彼の年齢や心境、立場に立って考えてみるとギコの気持ちもわかるのです。

年齢的には高校生でまだまだ子供の彼は、物事を客観視するということに慣れていません。
自分の立ち位置や将来の展望を計算した上で冷静に判断しろと言っても無理な話です。
普通はこういう場合は相談に乗ってくれる先輩格の人や、愚痴話を聞いてくれる友達と
意見や話を交わすことで自身も経験を積む物なのですが、故郷から飛び出し、
単身東京で暮らすギコには周りにそんな人はいませんでした。

けれどよく周りを見渡してみると本当は一人だけいました。
それはギコをスカウトしたプロダクションの人です。
この人は本来ならギコの良き相談相手になったはずなのです。
しかしギコは相談の方法すら知らず、また、この人への不信感からいきなりプロダクションを
辞めると言い出してしまいます。
それも結局はギコが子供だったから、としか言いようがないのかもしれません。



上の方でジェネレーションギャップ云々と書きましたが、それを象徴するかのように
ギコの話というのは、ギコと同年代の人たちと、ギコの親世代の人たち、
この両方からの視線の話が多いのも興味深いところです。

大阪にいるギコの家族、両親と姉はギコのことを心配しながらも大らかに見守ってくれています。
そんな姉とのエピソードや、ギコの祖母の死のエピソードは、ギコの話の中でも特に秀逸です。
喧嘩ばかりしていた姉がいつの間にか自分より遥かに大人になっていたのだと気が付くギコ、
姉の子供である、まだ赤ん坊の甥を見て、これからどんな未来をも選択できる自由を羨ましく思うギコ、
そして、自分も過去には甥と同じように限りない自由を持っていたし、それを眩しく思われる立場だったのだと
ここで初めて気が付き、彼はほんの少し成長します。
母親へも素直に感謝の気持ちを持ったり、更に紆余曲折あって、仕事人間で無趣味で
つまらない男だと思っていた父親を見直したりもします。



さて、精神的に成長したギコの人生は、しぃと再び東京で出会い、付き合うようになったことで、
またしても大きく変わっていきます。
牛丼屋のバイトから(ちょっと怪しい会社の)正社員へ、そしてしぃとの関係は……。

この続きはぜひ実際に作品を読んで確かめてみてください。

1。さんによると、ギコの話はあと二話で完結の予定だそうです。
その二話の投下がいつ頃になるのかはまだわかりませんが、いったいどんな風に
ギコの人生を締めてくれるのか、一読者として非常に楽しみです。

願わくばそれがどんな形であれ、ギコがギコ自身の幸せの形を見つけて欲しいものだと思っています。

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