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保管庫：東京！一人暮らしだモナ 【A-104 モララー】　（東京！一人暮らしだモナ・素材集）

2chにAA長編板が新設されたのは、今から７年前の2002年2月13日のことです。
そのわずか５日後の2月18日に一つのAAスレが立ちました。
それが通称「一人暮らしスレ」こと、「東京！一人暮らしだモナ」です。

一人暮らしスレは、その名のとおり東京で一人暮らしをする人々の話というわかりやすく
親しみやすい世界観に加え、それまでAA板で主流だった「リレー形式」とは異なる「マラソン形式」という
新しい参加方式で多くの描き手を集め、当時それなりに人が多かった長編板の中でも、
特に参加者の多いにぎやかなスレとなって行きます。

なお、リレー形式、マラソン形式などのスレ形式に関しての説明は一つ前のエントリをお読みください。
AA板の４つのスレ形式について

１。さんの描く三人の主人公達は、いわゆる「魅力的なキャラクター」では決してありません。
ギコ、モナー、モララーは全員が全員、どちらかというと情けなかったり、人として駄目な部分が多く、
もしも本当にこんな奴が側にいたら、友達にはしたくないとまで思えてしまうようなタイプばかりです。
しかし、それゆえにみんな非常に人間臭く、それぞれの駄目さにかえって共感できることが多いのです。

さて、そんな主人公のうちの一人であるモララーは、将来は弁護士を目指している大学生です。
彼はかなりランクの高い大学へ通い、金持ちの裕福な家庭に育ち、その上、見た目も
独身時代はモデルをしていた母親似のイケメンという大変恵まれた氏素性の人物です。

母親にとっても出来の良いモララーは自慢の息子であり、一人暮らしをしている彼の元へ足しげく通って
掃除や洗濯、料理といった身の回りの面倒を甲斐甲斐しく見ています。
しかし当のモララー本人はそんな母親の愛がうっとおしくてたまりません。
何不自由ない環境の実家から出て、わざわざ風呂も無いようなアパートで一人暮らしを始めたのも
母親の干渉から逃げ出すためでした。

人間、誰でも親の存在がうっとおしくてたまらない時期というのはあるものです。
いわゆる二次反抗期というヤツですが、早い人は小学校の高学年ぐらいから、
遅い人でも大学生ぐらいにこれを迎え、親の愛情ゆえの言動がかえって
苛立ちの原因となってしまうという心境に覚えがある人も多いのではないでしょうか。

モララーの話は、この母親との（一方的な）確執と、いかにも年頃らしい恋愛の悩みをメインに、
彼の成長が描かれていきます。
また、恋愛といっても中高校生のような甘酸っぱいプラトニックな悩みではなく、
もっとストレートにリビドーの問題を描いているのも画期的なことだと思います。

大学生になってやっと二次反抗期ということからわかるように、モララーは精神的にはかなり未熟であり、
実家が金持ちな上、やや過干渉ぎみな母親という点から見るに、おそらく欲しい物は大抵与えられて
それが当たり前という恵まれた子供時代を過ごしてきただろうことが伺えます。
それ故、彼は自分が与える愛の形という物を知りません。
彼が知っているのは与えられるだけの愛です。
そのせいで彼は自分が気が付かないうちに、自身も周りも傷付けてしまっています。

それとは対照的に、自分が与える愛の形しか知らない登場人物がモララー編にいます。
彼女はそのせいで、やはり自分が気が付かないうちに自身も周りも傷付けてしまいました。
その人物とはモララーの友人であるマルモラの彼女の「のの」です。

彼女の愛はただ与えるだけで、それ以外で人を愛する術を知りません。
無償の愛と言えば聞こえはいいですが、与えられるだけの愛も、与えるだけの愛も
結局、愛の形としては歪んでいるのです。

モララーの大学のサークルに新入生として入ってきたののを最初に見初めたのは
マルモラではなくモララーでした。
しかし結局、告白さえする前に、押しの強いマルモラにののを取られることになってしまうのですが、
もしもモララーとののが劇中で付き合う形になっていたとしても、二人は典型的な共依存の関係に陥り
不幸な結末となっていたことでしょう。
これを回避するには、お互いが人間的成長をするしかありません。

モララー編は2005年5月7日に一応の完結を迎えています。
彼は果たして人間的成長が出来たのか…？
それはぜひ実際に作品を読んで確かめてみてください。

なおモララーのその後は、まだ連載が続いているモナー編やギコ編で描かれる予定があるそうなので、
自分もこれを楽しみに一人暮らしスレを今後も見て行きたいと思います。