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AAレビュー 「新選組!血風録」

この作品は、自分の中では第一回レビューの「夏への扉」に並ぶ、原作アレンジAAの名作として
非常に強く印象に残っています。

歴史小説好きの人もそうでない人も、タイトルを見ただけでどんな内容のAA作品かは
容易に想像が付くと思いますが、実際その通り、幕末の京都を舞台に活躍した、
かの有名な新撰組の話をAA化した作品です。

続き



保管庫:新選組!血風録 (ぽろろの冷蔵庫

原作は、歴史小説の大家である司馬遼太郎が1964年に発表した短編連作「新選組血風録」で、
十五本ある内から、「前髪の惣三郎」、「海仙寺党異聞」、「虎徹」、「菊一文字」の四本がAA化されています。
(「虎徹」のみ、スレ主のミブロー ◆SHIBA/2x3g氏(以下ミブロー氏)ではなく名無しの人の投稿作品です。)

この作品が発表されたのは今から5年前の2004年のことなのですが、2004年というとNHKの大河ドラマでも
三谷幸喜脚本の「新選組!」を放送していた年だったりします。
もしかしたら作者のミブロー氏も大河ドラマに触発されてのAA化だったのかもしれませんね。

自分も、この年の大河ドラマを毎週楽しみに見ていた口でした。
TVドラマとはいえ、ちょうどそんな風に新撰組に触れている最中のことだったので、
このAAの連載が始まった時は当然注目し、新作が投下されるのが待ち遠しかったことを覚えています。



このAA作品の見所はいくつもあるのですが、特に必見だと思われる事柄を三項目に分けて
紹介していきたいと思います。

*各キャラクターの特徴をよくつかんだ三頭身AA
新撰組というのは、幕末を舞台にした物はもちろん、そうでない創作物にも
非常によく使われている定番モチーフです。
その影響もあり、有名な実在の人物達、近藤勇、土方歳三、沖田総司といった面々には
それぞれ既に、ある程度の外見の固定イメージを持っているという人も多いのではないでしょうか。

「新選組!血風録」の三頭身AAは、それらの特徴を非常によくつかんで作成されており、
三頭身でもここまで人物を個性豊かに表現できるというお手本のような作品です。
特に目と口の間に2ドットユニコードを使っての沖田総司の平目顔は、作者本人のこだわりだと、
スレ内でミブロー氏本人が語られていたのを覚えています。
登場人物の一人、山崎烝が山崎渉のAAになっている等という遊び心にもニヤリとさせられます。

また、着衣、それも和服を着ているAAを自由自在に動かしているという点も、
AAを描く人なら注目しておいて損はないかと思われます。

保管庫には登場人物のページもありますので、ぜひご参照ください。


*効果的に挿入される拡大AA
三頭身AAもよく動き、大変目を引くのですが、中途中途で挿入される拡大AAが
更に作品を引き立てています。
どのAAも表情がとても豊かで、惣三郎や女性キャラの視線には艶まで感じるほどです。

また、アクションの際の派手な効果線や効果音の使い方がまさに効果的で、
スレの見た目に緩急が付き、それがストーリーのテンポ運びを良くしています。


*秀逸なストーリーパロディアレンジ
新選組!血風録は、原作の新選組血風録にほぼ忠実な展開でありながら、
原作部分では触れられなかった部分にはミブロー氏なりの解釈を加えてあり、
原作を既読の人でも十分楽しめるストーリーです。

それに加え、合間合間にAA板ならではのパロディを挟んだり、軽めのギャグが挿入されており、
その加減が実に程よく、その効果で長めの話も飽きさせずに面白く読ませてしまう作者の手腕は
見事としか言いようがありません。

例えば、閑話に位置付けられている「木反木喬」は、モナー穴のパロディとなっています。
近藤勇の最期は斬首され、その首は梟首(晒し首)となり、その場所が板橋だと言われています。
もちろんこの史実を知らなくても読めますが、知っていると「木反木喬」の見方がまた少し変わるかもしれません。
これはパロディの一つの理想形ではないかと思います。



もしかしたらまだまだ新選組血風録の他の話のAA化もあるのではないかと
内心では期待していたのですが、ミブロー氏は菊一文字で完結を決めていたようで、
その点だけ個人的に少し…いえ、非常に残念に思います。

原作を読んでいる人もそうでない人も、新撰組に興味がある人もそうでない人も、
とにかく一見の価値が絶対にある作品だと自信を持って勧められる一作です。

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