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AAと著作権の話、再び

三ヶ月ほど前に当ブログで、「AAと著作権の話、諸々」というエントリを書いたのですが、
一昨日のITmedia Newsで気になる記事を読んだので、久々に再度著作権絡みの話です。

続き



-ACCS久保田事務局長ACCS久保田事務局長「自分のAA作者を探してます」 AAの著作権、ACCSの見解は
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0909/29/news091.html

記事の概要を三行でまとめるとこんな感じでしょうか。

-自分(ACCS久保田事務局長)の似顔絵AA作った人探してるよ
-その人に許可もらったら似顔絵AAを自分の名刺とかに使うよ
-AAにも著作権はあるから使う場合は製作者本人に許可もらおうね

この記事はニュース速報板にもスレが立ち、ある意味予想通りですが、
「これは罠ね!」というレスだらけになっていますw

-コンピュータソフトウェア著作権協会事務局長が自身のAAを作った2ちゃんねらーを捜索中
http://tsushima.2ch.net/test/read.cgi/news/1254220380/

まあ、元AAの作者を探すのは自由ですし、AAを使用するにあたり、作者の許可を
きちんともらってからにしたいという姿勢は正しいと言えるのではないでしょうか。
この手のAAは黙って使用すると騒ぎ出す人もいますしね。
ただ、作者が名乗り出るとはちょっと思えないのと、たとえ名乗り出たとしても
作者本人であるという証明ができるかどうかは微妙ですが。



さて、ここまではあくまでも個人の問題ですが、
>AAにも著作権はあるから使う場合は製作者本人に許可もらおうね
というのは個人の話では済まない可能性が出てしまうと思ったので、このエントリを書く事にしました。

以前の「AAと著作権の話、諸々」では、自分はこう解釈を述べています。

>|
このアナロ熊のAAは、既存のクマーAAの頭にアンテナを付けただけの改変AAです。
そして、実はクマーAAというのは数少ない、制作者がはっきりしているAAだったりします。
じゃあ、このAAの著作権は製作者にあるのか?というとこれもかなり微妙な気もします。
この理由としては、

・物理的には単なる文字列でしかない物に著作権があるのか?
・改変された時点でそれは元のAAとは違うAAという括りになるのでないか?
|<

この中の、「物理的には単なる文字列でしかない物に著作権があるのか?」というのは
ここで訂正して改めたいと思います。

ずばり、「AAにも著作権はある」と言い切ります。

記事中で「記号の集積によって作成されるAAは、絵を描くことなどと同様、表現形式の一種」
とありますがその通りで、表現手段が文字であるというだけのことで、AAも表現形式の一種である以上、
そこには著作権が発生するからです。

ここまで読んで、著作権=なんかお金絡みとか、縛りの話っぽいから絶対反対!
という方向にどうか安易に行かないでください。
どうも著作権の話になると、そのような脊髄反射が起こりやすいような気がします。

まず、日本はベルヌ条約という基本条約に加盟しており、この条約では著作権は無方式主義のため、
作品創作時に自動的に著作権も発生すると定められています。
要するに、あなたがノートに描いた落書きも、その時点で既に著作権が発生しているということです。

これをAAに照らし合わせると、誰が見ても絵として完成しているAAに著作権が発生するのは
当然のことと言うしかありません。



この辺で、「じゃあ、AAを無断でコピペ改変して使うのは著作権法違反なのか?」
という疑問が喉まで出掛かっていることと思います。
ご都合主義に聞こえるかもしれませんが、これに関してはほぼ無いと言っていいと思います。

理由としてはまず、著作権侵害による著作権法違反というのは親告罪であるという点です。
親告罪はその著作権を持っている著作権者本人が告訴しなければ公訴することができません。
著作権者が誰なのかあやふやだったり、著作権者であるということを証明し難いAAは、
この時点で告訴が難しいというのが簡単に想像できます。

あと、前述のクマーとアナロ熊のAAの例がわかりやすいのですが、
アナロ熊のAAの著作権というのは元のクマーAAの作者にあるのか、
それともアナロ熊の作者にあるのか、そこからしてAAの場合は不明瞭です。
四大AAに数えられているモララーも、元はモナーの目の部分のみの単純な改変AAですが、
では、モララーの著作権はモナー作者にあるのか、それともモララー作者にあるのか?
これらは両作者が公に裁判で争うなどしない限り、はっきりとした判断は誰にもできません。
コピペ改変前提のAAは、純粋なオリジナル性を保持していないケースが多く、
著作権者をはっきりさせるのも困難だということです。

そしてAAの製作者本人も、コピペで使われるかもしれないということを前提として、
2chでAAの発表をしているという暗黙の了解があります。
それが嫌な人は最初から本人証明がし易い個人サイト等でAAを発表し、
無断コピペと改変使用禁止という注意書きを付けるでしょうし、付けるべきです。
(実際、2ch系ではないメール用などのAAでそのような手段を取っているサイトはあります)

要するにAAの位置付けというのは、それ自体が完成した作品でありながら、
更にフリー素材にもなりえるという感じではないかと思います。
壁紙やアイコンなどのフリー素材も、著作権自体は最初にそれを作成した人にありますが、
改変しての使用OKを銘打っている場合も多く、AAもそれに通ずる物があるということです。

ちょっと長くなったので、自分の主張もわかりやすく三行にまとめておきます。
-AAにも著作権はあるよ、というか作者がいらないと言っても自動発生だよ
-でも、著作権者が誰なのかの判断とその証明はかなり難しいよ
-あと、2chで発表してる時点で作者はコピペや改変されて使われるのは折り込み済みだよ

こんなところでしょうか。



AAはコピペ改変での使用に寛容であるからこそ、進歩と繁栄がある文化です。
今回のITmedia Newsの記事を変な方向で鵜呑みにして、安易に著作権法違反だ云々と
言い出す人がいないことを祈るばかりです。

どのスレで見たのか、そして正確な文章はどうだったのかはさすがにもう忘れてしまったのですが、
のまネコ騒動の時に、個人的に強く印象に残ったレスがありました。

「空に輝く月は誰もが知っていて誰もが愛でることができ、そしてそれをモチーフとして
 誰もが自由に使用することができる。モナーもそうなるのが理想」

一字一句は多分まったく合っていないと思いますが、レス内容や趣旨は合っているはずです。
モナーに限らず、AAはみんなそうなって欲しい、そうであって欲しいと思います。

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